厚生労働科学特別研究事業

在宅医療の災害時における医療提供体制強化支援事業
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シミュレーション訓練

シミュレーション訓練について

 BCPが緊急時に有効に機能するためには、スタッフへの教育・演習を実施するなどの平常時のマネジメントが重要である。常に“備え”のある状態を維持するために、訓練を実施し、見直し、改善を加えるというPDCAサイクルを回して、BCPによるアウトカムの向上を図っていく。それが大前提に置かれていることを忘れてはいけない。
 医療・介護機関などヘルスケア提供機関は、自らが被災しようとも、患者・利用者への対応と新たな被災患者を受け入れるための診療機能、ケア提供機能の継続が求められる。救命や処置、必要とされるケアを迅速に適切に行うために、時間的にも切迫する中、限られた資源をどのように配分するか、何を優先していくかの的確な判断が求められる。こうしたことを盛り込んで策定したBCPの実効性を向上させるためには、演習・訓練は非常に重要である。
 ここで提示する演習・訓練のプログラムは、作成した緊急初期対応の実効性を評価するため、また策定したBCPを発動するかどうかの見極めのシミュレーションに利用される。したがって、本訓練プログラムを利用する際は、ある程度、想定する災害とそれに起因する被害を厳しく想定しておく必要がある。
 シミュレーション訓練キットのコンテンツは、1)イベントスライド、2)イベントを提示するWEBシステムであり、イベントスライドを使った訓練では、ファシリテーターが各スライドに示されたイベントごとに、「この時点で組織として、どんな行動を起こしますか?」「スタッフ個人(あなた)としてはどう行動しますか?」「患者・利用者の医療・ケア提供はどうしますか?」の質問を投げかける。スタッフは、自組織内で対応に関する意思決定を行うとともに自組織外との調整が必要なものについては、意思決定表で設定を決定しながら(決して都合の良い設定としない)、訓練を進めていく。
 繰り返しになるが、BCPは「作って終わり」ではない。作ったら訓練を実施し、見直し、改善するPDCAサイクルを回し続ける必要がある。それによって、BCPによるアウトカムの向上は図られる。これが大前提に置かれていることを忘れてはいけない。訓練実施後は、振り返りを行い、浮き彫りになった課題やボトルネックについて検討し、BCPを修正・改良する。本当の意味での「有事に実効性のある自機関BCPづくり」は、ここからスタートすると言っても過言ではない。BCPを改良するサイクルを文化として根付かせ、BCPを育てていっていただきたい。 厚生労働省 在宅医療の事業継続計画(BCP)策定に係る研究研究代表者   山岸暁美

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