山岸 暁美 | 一般社団法人コミュニティヘルス研究機構 機構長・理事長 慶應義塾大学医学部公衆衛生学教室 |
小井土 雄一 | 独立行政法人国立病院機構本部DMAT事務局 DMAT事務局長 |
池上 徹則 | 大原記念倉敷中央医療機構倉敷中央病院 救急科主任部長 |
古屋 聡 | 山梨市立牧丘病院 整形外科・訪問診療医師 |
遠矢 純一郎 | 医療法人社団プラタナス桜新町アーバンクリニック 院長 |
清水 政克 | 医療法人社団清水メディカルクリニック 理事長・副院長 |
市川 学 | 芝浦工業大学システム理工学部 准教授 |
事務局 貝原 敏江 | 一般社団法人コミュニティヘルス研究機構 |
有事対応に実効性を持つツールとして注目されている、Business Continuity Plan:事業継続計画:以下BCP)。
BCP策定により、Preventable Disaster Death(PDD:防ぎ得た災害関連死)の約半数を阻止できる可能性があると報告されている。
とはいえ、在宅医療・ケア提供機関は小規模事業体が多い。つまり自施設のBCPだけでは、有事対応は十分に機能せず、やはり平時からの近隣の医療・ケア提供機関等との相互協力交渉や協定が必要となる。そして、保健所を含む行政や医療・介護機関との連携も必須だ。さらには近隣住民の方々やNPOとの普段からの関係性の中でぐっと選択肢が広がることもある。
普段の診療やケアにおいても、我々が選択肢をたくさん持ちうることは、臨機応変、且つ適切な実践に繋がる。この策がダメでも、これはどうか、これならもっとうまく行くかもしれないと、個別性の高い、つまり目前の想定外の事態にも、自身に選択肢が豊富にあることは、方針に関する意思決定や実践をスムースにし、また、そこからのアレンジも容易にする。
有事も同じである。たいていの場合、災害は人の想像を超えてやってくる。想定外のドラマの連続だ。だからこそ、平時から考え検討することで、有事の選択肢を増やしておく。これが、最も重要なことだ。BCPを作ることが目的ではない。このBCP策定プロセスで、アセスメントをしたり、スタッフで対応を議論することによって有事対応の選択肢を増やすこと、このことこそが防災・減災に繋がる。
そして各機関のBCP策定のプロセスで、必ずや地域の組織間で協力しないと解決しないこと、協力することで限られた資源を有効に活用できることが明らかになってくる。更なる取り組みとして、事業所同士の連携はもちろんのこと、「地域BCP」として、地域の医療やケアの継続を検討していくことを強く推奨する。
この手引きが、各機関のBCP策定、さらには、地域を面と捉え、その医療やケアの継続について考える際の一助となれば幸甚である。
在宅医療提供機関に係る事業継続計画に係る研究 研究代表者
慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室
一般社団法人コミュニティヘルス研究機構
山岸 暁美